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第15回CMSAIコロキウム
「神経系のゆらぎと情報処理:線⾍感覚⾏動システムのデータサイエンス」

  1. 講演会名称:第15回 CMSAIコロキウム
  2. 開催日時:2024年6月12日(水)17時05分〜18時05分
  3. 講演会場:ファカルティルーム(7号館3階)※対面+Zoom配信
         登録参加URL:
    https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZIlf-6gqzwqHdNx35079IUwsd7IrfaCAiLZ
  4. 講演者 :松⼭ 裕典氏
    名古屋⼤学・⼤学院理学研究科附属ニューロサイエンス研究センター特任助教
  5. 講演題目 :神経系のゆらぎと情報処理:線⾍感覚⾏動システムのデータサイエンス
       要旨:生き物の脳はしばしばコンピュータに例えられますが、脳の情報処理のしかたはコンピュータのそれと決定的に異なる性質を持っているように思われます。例えば、脳における「自発活動パターン」の存在や「入出力の不確実性」は、両者の違いを示す顕著な例と言えます。脳において見られるこうした「ゆらぎ」がどのように生成され、それが脳のダイナミクスや情報処理にどのような役割を果たしているのかを明らかにすることが、私たちの興味の中心にあります。
     私たちは、線虫 C. elegans をモデルとして、神経系の動作原理を明らかにしようと試みています。C. elegans はわずか302個のニューロンからなる小さな神経系を持ち、さらにそれらのニューロン間のシナプス接続地図(コネクトーム)が完成しているきわめて well-defined な生体システムです。これまでの私たちの研究により、線虫が過去の経験に依存して温度刺激に対する嗜好性(好き嫌い)を切り替えるとき、温度感覚ニューロンとそのシナプス後パートナーである介在ニューロンの関係性が変化していることが明らかとなりました。さらに、線虫の神経回路内には、行動の「ゆらぎ」を促進し、神経活動のパターンに「ばらつき」をもたらすニューロンが存在することも発見しています。現在は「同一の刺激のもとでも動物の行動出力がばらつくメカニズムは何か?」という問題に光遺伝学を用いたアプローチで取り組んでいます。特に、光遺伝学を用いて特定のニューロンの活性を操作しながら多数の線虫の行動を追跡できるシステムを開発し、多量の時系列データから行動パターンを抽出することを目指しています。本セミナーでは、これまでの研究に加え、現在進行中のトピックと将来展望も含めて議論する予定です。